【初心者向け】社労士試験の概要を解説!合格率は?受験生泣かせって?

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社労士試験について
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  • 試験の概要を知りたい
  • 合格率はどのくらい?
  • 何が大変な試験なの?

社労士資格に興味はあるけど試験のことが分からない、今回はそんな人に向けて試験制度についてまとめてみました。

「受験生泣かせの試験制度」と言われる理由も解説します。

目次

社会保険労務士は人事労務・社会保険の専門家

社会保険労務士、いわゆる社労士は労働・社会保障に関する法律の専門家です。全国社会保険労務士連合会のサイトでは主な業務として以下の5つを挙げています。

  • 労働社会保険手続業務
  • 労務管理の相談指導業務
  • 年金相談業務
  • 紛争解決手続代理業務
  • 補佐人の業務

労働社会保険に関する法律の数は55以上。全ての法律に精通することは不可能なので、人によって得意とする分野は異なります。働き方は大きく2つに分けられて、「勤務社労士」として企業や社労士事務所で勤めることも、「開業社労士」として自身の事務所を構え、個人事業主や法人の代表として働くことも可能です。

自分の理想の働き方を実現しつつ、人事労務・社会保険の知識で企業や個人の悩みの解決を支援することができる非常に魅力的な資格です。

内部リンク(作成中):社労士資格について

試験制度の基本情報

社労士資格を取得するには年1回実施される国家試験に合格する必要があります。ここからは試験の概要をみていきましょう。

まずは基本的な以下の情報について。

  1. 受験資格
  2. スケジュール
  3. 受験者数、合格者数
  4. 受験者層

※正式な情報や詳細は必ず試験の公式サイトをご確認ください。

受験資格

同レベルの他の国家資格は受験要件がないものがほとんどです。しかし社労士試験を受験するには、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 一定以上の学歴
  • 実務経験
  • 一定の国家資格の保有者

受験を申込む時に証明書を添付します。

一定の学歴

以下のいずれかの学歴を有する必要があります。

  • 大学、短期大学、専門職大学(前期課程修了含む)、専門職短期大学、高等専門学校を卒業
  • 上記(短期大学除く)において62単位以上を取得または一般教養36単位以上かつ専門科目48単位以上取得
  • 旧学校令の指定学校を卒業
  • 専門学校(2年以上かつ総授業時間数1,700時間以上)を修了
  • その他厚生労働大臣が認めた学校等を卒業・修了(一覧
  • 全国社労士連合会の審査を受け、短期大学卒業と同等の学力があると認められる

実務経験

認められる実務経験は以下の通り。全て通算3年以上の実務経験が必要です。

  • 健康保険組合等の役員または従業員
  • 国家公務員・地方公務員
  • 日本郵政公社の役員または従業員
  • 全国健康保険協会又は日本年金機構の役員または従業員
  • 社労士又は弁護士の補助者
  • 労働組合の専従役員
  • 会社等の労務担当役員
  • 労働組合職員又は個人事業主の従業者

一定の国家資格の保有者

対象の国家資格は以下の通りです。

  • 厚生労働大臣が認めた国家資格(一覧
  • 司法試験予備試験等の合格者
  • 行政書士試験の合格者

スケジュール

例年以下のスケジュールとなっています。

  • 受験申込;4月中旬~5月
  • 試験日:8月第4日曜日
  • 合格発表:10月初旬
    ※令和3年度までは11月でしたが、令和4年から1か月前倒しになりました。

受験者数、合格者数の推移

過去の受験者数と合格者数は以下の通りです。

スクロールできます
年度申込者数受験者数合格者数合格率
令和350,43337,3062,9377.9%
令和249,25034,8452,2376.4%
令和元49,57038,4282,5256.5%
平成3049,58238,4272,4136.2%
平成2949,90238,6652,6136.7%
平成2851,95339,9721,7704.4%
平成2752,61240,7121,0512.5%
平成2657,19944,5464,1569.3%
平成2563,64049,2922,6665.4%
平成2466,78251,9603,6507.0%
過去10年間の推移(厚生労働省資料を基に作成)

申込者数・受験者数は近年減少傾向にありますが、どの年も合格率1ケタ台の非常に厳しい試験です。

特徴的なのは申込者と受験者に毎年1万人以上の隔たりがあること。4,5月には受験をするつもりだったが、当日受験を出来なかった人、受験を諦めた人が毎年1万人以上いることになります。

辞退者の多さも社労士試験の大変さを表しています。。。

受験者層

次に、合格者の年齢と職業について、令和3年度試験の結果を例に見ていきます。

年齢
24歳以下2.2%
25~29歳10.6%
30~34歳17.5%
35~39歳18.1%
40~44歳14.1%
45~49歳14.4%
50~54歳9.4%
55~59歳7.5%
60歳以上6.2%
令和3年度合格者の年齢別割合

年齢別に見ると、30歳代、40歳代がボリューム層。20歳代が極端に少ないのは前述した受験資格の影響です。

令和3年の最年少合格者は20歳。その方はクレアールを利用して合格されました。

職業
会社員60.4%
無職10.3%
公務員7.8%
団体職員5.6%
自営業4.2%
役員3.4%
学生1.1%
その他7.2%
令和3年度合格者の職業別割合

職業別では会社員が圧倒的に多く、6割を占めています。

以上から、社労士試験は30~40歳代の働き盛りの社会人が主な受験者層であることが分かります。労務に直結する資格であること、全問題マーク式なので仕事と勉強の両立しやすいことが理由なのかもしれません。

女性の割合も高く、子育てをしながら勉強しているワーママさんが多いのも特徴です。

試験内容

試験は大きく分けて8科目。出題形式は選択式と択一式の2つです。

各科目と出題形式ごとの配点は以下の通り。

科目選択式(配点)択一式(配点)
労働基準法
労働安全衛生法
1問
(5点)
労基7問
安衛3問
(10点)
労働災害補償保険法
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
1問
(労災のみ)
(5点)
労災7問
徴収3問
(10点)
雇用保険法
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
1問
(雇用のみ)
(5点)
雇用7問
徴収3問
(10点)
労務管理その他の労働に関する一般常識1問
(5点)
労務5問
社保5問
(10点)
社会保険に関する一般常識1問
(5点)
健康保険法1問
(5点)
10問
(10点)
厚生年金保険法1問
(5点)
10問
(10点)
国民年金法1問
(5点)
10問
(10点)
合計8問
(40点)
70問
(70点)
科目と出題形式ごとの配点

選択式はいわゆる穴埋め問題。5空欄に対して20個の選択肢、または1空欄に対して4つの選択肢×5空欄、の形式で出題されます。試験時間は10:30~11:50の80分。

択一式は5つの選択肢から問題文の条件にあう選択肢を1つ選ぶ形式の問題。単純な「正しいもの(誤っているもの)はどれか。」だけでなく、「正しい組み合わせはどれか。」「正しい選択肢はいくつあるか」という応用的な問われ方もされます。

試験時間は13:20~16:50の3時間30分。一見すると非常に長丁場ですが、

  • 5肢×10問×7科目=350問
  • 3時間30分 = 210分
  • 単純計算すると約90秒で1肢を判断

つまり意外と1問に掛けられる時間が少なく、時間が足りない人も多いのが択一式です。

3時間30分ずっとは考えられないので、実際に使える時間はもっと短くなります。

ちなみに試験時間中、トイレ休憩と飲料補給(ペットボトルのみ)は可能です。その場合、手を挙げて試験官に立ち会ってもらわないといけません。

労働科目、社会保険科目、一般常識科目の3分野

社労士試験の特徴はその出題範囲の広さ

大枠では8科目ですが、労働基準法と安全衛生法は2つの法律で1科目、労働保険徴収法は労災保険とセット、雇用保険とセットでそれぞれ1科目なので、労働科目だけでも5つの法律で3科目が構成されています。

それ以上に厄介なのが一般常識科目。「労務管理その他の労働に関する一般常識」は「労働関係の法令全般」を、「社会保険に関する一般常識」は「社会保険関係の法令全般」を対象にする科目です。

法令だけじゃなくて統計調査や白書からも出題されます。

この2科目があるため「労働・社会保険に関係すること全部」が学習対象となり、他の国家資格と比べても圧倒的に出題範囲が広い試験になっています。

そのため「膨大な学習範囲のどこまでを勉強するか、どうやってさばくか」を考えて対策することが非常に重要です。

内部リンク(作成中):科目ごとの特徴・対策

内部リンク(作成中):学習スケジュール

似ている規定が多く混乱しやすい

社労士試験のもう一つの特徴が出題科目の大半が公的保険に関するものであること。

公的保険に関する科目
  • 労働災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 社会保険に関する一般常識

そのため「似てるけど若干違う」規定が科目間に多数あり、受験生を苦しめています。

就業規則に定められた見舞金は賃金に当たる。

労働基準法の問題なら〇

労働保険徴収法の問題なら×

配偶者の遺族年金が本人の申し出で支給停止されていれば、その子供に遺族年金が支給される。

国民年金法の問題なら〇

厚生年金保険法の問題なら×

このように、同じ問題文でも法律が変わると正誤が変わる問題が山ほど作れます。そのため学習初期は正解できても、他の科目を勉強すると混乱し始め問題が解けなくなる、なんてことが社労士試験の勉強では日常茶飯事です。

知識の整理をするためには横断整理が有効です。

科目別、合計点それぞれに合格基準点がある

次に合格ラインについて。まずは選択式、択一式の年度別の合格基準点を見てみましょう。

スクロールできます
年度選択式択一式救済
(選択式)
救済
(択一式)
令和324点45点労一 1点
国年 2点
令和225点44点労一 2点
社一 2点
健保 2点
令和元26点43点社一 2点
平成3023点45点社一 2点
国年 2点
平成2924点45点雇用 2点
健保 2点
厚年 3点
平成2823点42点労一 2点
健保 2点
常識 3点
厚年 3点
国年 3点
平成2721点45点労一 2点
社一 2点
健保 2点
厚年 2点
平成2626点45点雇用 2点
健保 2点
常識 3点
平成2521点46点社一 1点
労災 2点
雇用 2点
健保 2点
平成2426点46点厚年 2点
過去10年間の合格基準点

選択式は合計で25点前後、択一式は合計で45点前後、つまり6.5割~7割得点できれば合計点はクリアです。

問題は科目別の基準点。選択式では5空欄中3空欄以上、択一式では10問中4問以上を全科目で得点しなければいけません。

令和3年の場合(合計基準点:選択24点以上、択一45点以上)

Aさん:選択式30点(労基安衛のみ2点、他は4点)、択一式56点(全科目8点)

Bさん:選択式24点(全科目3点)、択一式49点(全科目7点)

合計点は選択式・択一式どちらもAさんの方が高得点ですが、

  • Aさん:選択式の労働基準法・労働安全衛生法が2点(3点未満) 
    ⇒ 不合格
  • Bさん:選択式・択一式どちらも全科目で基準点越え、合計点もその年の基準点以上 
    ⇒合格

となります。

この試験制度には批判的な声も少なからずあります。しかし受験生の立場では文句は言えない・・・

選択式は救済措置が取られることが多い

科目別合格基準点のハードルが高いのが選択式。全科目で5空欄中3空欄以上、つまり半分以上を得点する必要があります。

1つ難問が混ざっていたら残り4空欄で3つ正解しないといけません。

全科目で基準点を超えるのは簡単ではなく、全8科目中、1,2科目は毎年難しい問題が用意されているのが社労士試験の嫌なところ。

しかしあまりに問題が難しいと平均点が低くなり、3点以上取れた受験生が少なくなることがあります。そういう場合に例外的に合格基準点を3点から2点、1点に引き下げる処置が行われます。これが救済措置です。

令和3年の場合

Aさん:選択式30点(労基安衛のみ2点、他は4点)、択一式56点(全科目8点)

Cさん:選択式30点(労一のみ2点、他は4点)、択一式56点(全科目8点)

令和3年は「労務管理その他の労働に関する一般常識」が1点以上、「国民年金法」が2点以上の救済対象となりました。AさんとCさんは合計点も内訳もほぼ同じですが、

  • Aさんは救済の対象となっていない(3点が必要な)労働基準法・安全衛生法で2点を取った
    ⇒ 不合格
  • Cさんは救済の対象となった労一で2点を取ったが、労一はこの年1点以上で救済対象
    ⇒合格

となります。

また、先ほどの表から分かる通り、選択式では毎年のように何らかの科目で救済措置が取られています。

「この科目さえ2点救済になれば合格できる・・・!!」という受験生が毎年少なからずいるので、どの科目が救済の対象になるかは多くの受験生にとって死活問題です。

例年、各予備校や通信講座が合格基準点予想を出しますが、一番注目されるのが選択式の救済です。

選択式の問題は「みんなが知ってる基本事項」を聞くか「重箱の隅をつつく細かい論点」を聞く極端な問題が多かったのですが、令和4年度の試験は各科目で「基本的な知識を使って考えないと解けない問題」が多く出題されました。来年度以降もこの傾向が続くかどうかは不明ですが各予備校や受験生から非常に評判が良かったので是非続けてほしいところです。

受験生泣かせの試験制度

最後に、社労士試験が「受験生泣かせ」と言われる理由を3つ解説します。

  • 1科目でも基準点を下回ればアウト
  • 択一式も楽じゃない
  • 部分合格がない

1科目でも基準点を下回ればアウト

社労士試験は選択式と択一式どちらかの1科目を失敗するだけで不合格になるのが最大の特徴です。「合計点はクリアしているのに科目別の基準点が足りなかった」は頑張ってきた受験生の心を折る敗因の一つです。

毎年1科目だけ1点足りず何年も受験している、なんて人も少なくないのが社労士試験の怖さです。

それでいて誰も知らない規定が問われたり、条文の非常に細かいところを聞いてきたりと、対策がしづらい試験であることもメンタルを追い込みます。

「社労士試験は運も必要」と揶揄される一番の原因が科目別基準点の存在です。

内部リンク(作成中):選択式対策

択一式も楽じゃない

択一式の場合、科目別基準点だけでなく総合点クリアも難関です。

  • 細かいところで誤りを作る
  • 受験生が知らない選択肢も多い
  • 正確に覚えていないと正誤判断ができない

択一式で得点するには各科目の規定を正確に覚え、理解することが必要です。言葉でいうと簡単ですが、膨大な学習範囲をまんべんなく覚えるのは大変で、択一式の総合点がなかなか延びずに苦労している受験生も沢山います。

選択式で基準点割れをしないよう細かいところを覚えながら、択一式で合格点に達するよう全体像を正確に把握する。このバランスの難しさが社労士試験の難易度をより高めています。

部分合格がない

例えば中小企業診断士の場合、科目別合格の制度があります。科目別合格とは、1次試験が不合格でも基準点に達した科目については翌年以降数年間、免除として扱われる制度です。

社労士試験には科目別合格の制度はなく、更に選択式のみ・択一式のみ合格といった制度もありません。不合格になった場合、全科目を午前・午後の両方受ける必要があります。

完全合格か全て再挑戦か、2つに1つの厳しい試験です。

諦めないことが一番大切な試験

今回は社労士試験の概要を、試験の内容や「受験生泣かせ」であることを中心に解説しました。

  • 働き盛りの社会人が受験者のボリューム層、働きながら目指しやすい資格
  • 出題範囲が膨大。午前中に選択式、午後に択一式を実施
  • 選択式の基準点割れ、択一式の総合点不足、部分合格がないことが受験生泣かせ

後半だいぶ脅してしまいましたが、正しいやり方で対策すれば突破できる試験です。

重要なのは基本を広く浅くおさえること。受験生の大半が落とさない問題を100%正解すれば必ず合格しますし、合格基準点を超えるだけなら100%正解する必要はもちろんありません。

法的思考力はあまり問われず、最終的には記憶が勝負の試験なので、今まで法律を勉強したことがない人でも必ずチャンスがあるのが社労士試験の良いところ。

頭の良し悪しよりも、諦めずに勉強を続けることが一番大切です。

社労士資格に興味がある人には是非挑戦してほしいです。

内部リンク(作成中):学習の全体像

社労士試験について

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